家庭用品品質表示法では、石鹸以外の界面活性剤で作られた洗浄剤は、すべて合成洗剤として表示されます。
家庭用品品質表示法では、安全性や環境負担などの影響に基づいて定められてはいません。 |
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このように石鹸以外の界面活性剤で作られた洗剤は、合成洗剤と表示されます。
1960年の後半以前は、合成洗剤の界面活性剤は、ABS(分枝鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)が使用されていました。
しかし、ABSの大量消費が原因で河川での発泡問題が社会問題となりました。
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発泡問題とは、ABSが排出中に泡立ったまま長期間滞留して、河川や湖などの水質や地下水の汚染問題をひきおこしたのです。
この問題は、先進国でも発生し、ABSのアルカリ基が枝分かれした部分が排出中に分解されずに河川に長期滞留することが分かりました。
■ ABS(分枝鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の構造式
この問題がきっかけでABSに替わる合成洗剤の開発が進められ、アルキル基が枝分かれしていないLAS(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)に切り替えられました。
■ LAS(直鎖型アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム)の構造式
LASは、分解性がよくABSにかわって使われるようになります。
このような生分解性が良い洗剤を「ソフト型」と呼び、ABSのように生分解性が悪い洗剤を「ハード型」と呼びます。
ハード型からソフト型に合成洗剤に転換することを、「ソフト化」といいます。
現在は、ABSは使われず、LASよりも生分解性がよい合成洗剤が使われています。
AE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)について
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市販合成洗剤によく使われているAE(ポリオキシエチレンアルキルエーテル)が配合されていますが、このAEは石油からでも天然油脂からも製造できます。
AEは、ノニオン(非イオン)界面活性剤で、石鹸やLASがアルカリ性でないと汚れが落しにくいのに対して、AEは液性に関係なく汚れを落とすことができます。
台所洗剤の「一滴で油汚れを分解する」CMが有名ですが、これは台所洗剤に使用しているAEの親水基部分を目的に応じて自由に変えることができるからです。
また、AEは少ない使用量で洗浄力が高く、生分解性もLASよりもよい利点があります。
よく、「合成洗剤は、生分解性が悪い」と言われていますが、それはABSを使用していた1970年以降の話で、現在使用している合成洗剤では、かなり改善されています。
合成洗剤の生分解性は、法的にも1971年からの規格により、生分解性が90%以上(ABSの生分解性は20%以下)であることが要求され、この規格に準じて製造されています。
よって合成洗剤の生分解性も随分よくなり、現在では合成界面活性剤AS(アルキル硫酸エステルナトリウム)の生分解性は、極めて生分解性がよい石鹸に近づいてきています。
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といっても合成洗剤の生分解性は、まだ石鹸にかないませんが石鹸に比べると使用量を少なくできるのは、合成洗剤の利点です。
石鹸にしても合成洗剤にしても、使いすぎは環境負担になります。
参考文献 洗剤と洗浄の科学 中西 茂子 著 コロナ出版 石鹸・洗剤100の知識 大巻健男 東京書籍 |
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