【状況】
2〜3回目の洗濯にファスナー付近の表側に赤い色が転々と出ていることに気付きました。その後、洗濯毎に赤い色が広がってきました。
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【調査内容】
前ファスナー付近の表生地が黄色から赤色に変色をしています。
変色の程度は、変退色用グレースケールで1級。
@ 着眼点
金属ファスナーと接触している所の生地が変色しており、他の部分には、変化は全くありません。
A 染色堅ろう度(同じ生地での測定結果)
JIS試験方法 |
変退色 |
汚染 |
洗濯 |
L 0844(A−1号) |
5 |
5 |
汗(酸性) |
L 0848 |
5 |
5 |
汗(アルカリ性) |
5 |
5 |
*染色堅牢度の等級は、5級(強)〜1級(弱)までで、中間段階(例3−4級)も含めて、
9段階に分類して表示します。
A 分析
ファスナーの素材を確認すると真ちゅう性のファスナーで銅68%、亜鉛32%。
染料は、無地染めで反応染料を使用。
再現試験は、変色していない生地にファスナー10円玉をはさみ、汗試験の条件で圧着し、酸性の汗液を使用すると、どちらも生地が赤く変色しました。
以上のことから洗濯後、湿潤状態で、ファスナーから銅イオンが染料と反応して金属結合を形成して、変色したと判断できます。
ファスナーは製品に取り付けられていますので、洗濯での湿潤状態は避けられません。また、銅イオンと染料の反応はおさえることができません。
対策として、金属ファスナーな金属ボタンを使用する場合は、事前に金属と染料の相性を調べることが必要です。
このような事故は、ネックレスやブレスレット、金属製の時計などに汗が付着すると、変色する場合があります。また、金属が原因で変色した衣類を、過炭酸ナトリウムで高温洗濯すると、セルロース繊維の場合は、金属が酸化を促進させるために破れが生じることがありますので注意が必要です。
参考
社会法人日本衣料管理協会 繊維製品の苦情処理技術ガイド